絶対覚えておきたい高額療養費制度
高額療養費制度を適用したときの自己負担限度額とは
高額療養費制度とは医療費が一定額を超えた場合に支払う金額を減らしてくれる制度です。
この制度は大きな病気や怪我をしたときにかなり有効な制度なので、生命保険や医療保険を契約前に絶対に知っておきましょう。
この高額療養費制度ですが、支払う医療費の自己負担限度額は年収によって異なります。
ちなみに自己負担限度額は以下の表の通りです。
所得区分 | 自己負担限度額 |
---|---|
年収約1160万円以上 | 252600円+(医療費ー842000円)×0.01 |
年収約770~1160万円 | 167400円+(医療費ー558000円)×0.01 |
年収370~770万円 | 80100円+(医療費ー267000円)×0.01 |
年収約370万円以下 | 57600円 |
※医療費とは全額負担の場合の金額です(3割負担前の金額)
※所得区分は目安です。詳しくは市区町村の役所(国民健康保険の場合)、各健康保険団体(会社員の場合)にお問い合わせください。
日本の平均年収は420万円くらいなので、上の表の黄色いラインに当てはまります。
つまり、大きな病気や怪我をしても8万円+αで済むことになります。
[st-kaiwa1]高額療養費制度の詳しい中身はいいので、とりあえず「高額療養費制度」というワードを覚えておきましょう。万が一の時に役に立ちます[/st-kaiwa1]支払いが楽なる健康保険限度額適用認定証
高額療養費制度は確かに医療費が安くなりますが、一般的には3割負担分を支払って、後で差額が返ってくる仕組みです。
例えば 医療費が100万円かかった場合
※年収約370万~770万円
30万円(支払金額)ー8万7430円(自己負担限度額)=21万2570円(差額)
つまり、最初に30万円を支払って、2~3ヵ月後に差額の21万2570円が返ってきます。
この場合、貯金が十分にある人はいいですが、貯金があまりない人にとっては30万円の現金がなくなることになるのでキツイですよね?
そんな時は「健康保険限度額適用認定証」というものをもらうと、病院の窓口の支払いが自己負担限度額の8万7430円で済みます。
入院があらかじめ分かっている場合などは「健康保険限度額認定証」を発行すると、現金不足にも陥りにくく便利です。
無利子の高額療養費貸付制度
高額療養費制度は先ほども言ったように、基本的には3割負担分を支払って、後で差額が返ってきます。
この時もし、3割負担分の支払いができなかったらどうしますか?
親や親せきからお金を借りる?
それも一つの方法ですが、「高額療養費貸付制度」という便利な制度があります。
これは高額療養費制度を使って払い戻しを受けるまでの間、無利子でお金を貸してくれる制度です。
大体、高額療養費の支給見込み額の80%~90%を貸してくれます。
例 医療費100万円(全額負担)の場合
※年収約370万~770万円
高額療養費支給見込み額=30万円(3割負担分)ー8万7430円(自己負担限度額)=21万2570円
貸してくれる金額:21万2570円×0.8=約17万円
病院には借りたお金17万円+自己資金13万円でとりあえず支払います。
借りたお金の返済方法ですが、高額療養費制度の適用で返ってくる21万2570円と相殺してくれます。
返済:21万2570円(返ってくる予定のお金)ー17万円(借りたお金)=42570円(実際に返ってくるお金)
なんだかややこしいですが、医療費が30万円(3割負担分)の時はとりあえず13万円くらい自己資金があれば医療費を払えるということです。
そして、高額療養費制度の適用で返ってくる予定のお金で自動的にお金が返済され、余ったお金が後日振り込まれます。
3割負担分のお金が支払えない場合はぜひ活用しましょう。
高額療養費制度の3つの注意点
高額療養費制度は自分で申請しないと適用されない
高額療養費制度の注意点はいくつかありますが、覚えておいてほしいのは大きく3つあります。
高額療養費制度は基本的に自分で申請しないと適用になりません。
そのため、医療費が高額になった場合は必ず申請しないと、通常の3割負担のままになってしまいます。
高額療養費制度を適用するためには以下の場所にお問い合わせしましょう。
国民健康保険加入者 | 市区町村の役所 |
---|---|
会社員 | 各健康保険団体(協会けんぽ) |
月をまたいでの入院で損する可能性がある
まず1つめは「月をまたいで入院すると損をする」ということです。
高額療養費制度の医療費とは1ヵ月あたりの医療費のことを指します。
そのため、月をまたいでの入院は高額療養費制度が適用されないこともあります。
例 年収約370~770万円の場合
医療費:トータルで15万(3割負担) 3月7万5000円、4月7万5000円
入院期間:3月下旬~4月初旬
1ヵ月あたりの医療費が8万100円を超えていないので、高額療養費制度の適用になりません。
一方で3月初旬~3月中旬まで入院していた場合などは高額療養費制度が適用されます。
他にも3月の医療費が12万円、4月の医療費が3万円の場合は3月だけ高額療養費制度が適用されます。
このように月をまたいでの入院では高額療養費制度がどちらの月も適用にならなかったり、片方の月だけ適用になったりします。
[st-kaiwa1]↓↓以下覚えておくと便利な知識です↓↓[/st-kaiwa1]1人あたりの医療費が高額療養費制度の適用額(例8万100円)に達していない場合でも、同じ月に同じ世帯で同じ健康保険で医療費が一定金額を超えた場合に家族の医療費を合算することができます。
つまり、自分の医療費だけでは高額療養費制度の適用にならなくても家族の誰かの医療費と合算すると高額療養費制度が適用されて、医療費が戻ってくる可能性があるということです。
詳しくは各市区町村の役所かけんぽ協会などにお問い合わせください。
差額ベッド代や食費などは適用外
高額療養費制度が適用になるのはあくまで医療費です。
1人部屋の代金や食費、テレビ代などは適用外なので注意しましょう。
入院して働けないときに貰える傷病手当金
傷病手当金は入院して働けない時に生活費として月給のおよそ3分の2を最長1年6か月貰える制度のことです。
※国民健康保険の人は傷病手当金を貰えません。会社員のみの保障制度です。
支給金額は以下の式で計算されます。
傷病手当金の支給額
月給÷30×2/3×28~31日 (月給÷30÷3×2×28~31日)
要するに月給のおよそ3分の2が支給されます。
会社員の業務上や通勤途中の病気や怪我の保障をしてくれる労災保険
労災保険は会社員が業務上や通勤途中の病気や怪我の保障をしてくれる保険です。
給付方法は「療養補償給付」と「休業補償給付」があり、休業補償給付の支給金額は日給の約80%です。
※労災保険の注意
労災保険は通勤災害も対象ですが、以下のようなパターンでは労災保険の適用にはならないので注意しましょう。
例1:会社帰りに飲みに行って、その帰りに怪我をした。
例2:本来、電車で通勤するところを自転車で通勤して怪我をした。
特に例2で運動がてらに自転車で通勤しようとする人は注意が必要です。
年間の医療費が高額な人は要チェック!医療費控除で払いすぎた税金が返ってくる
医療費控除の計算方法
医療費控除とは1年間の医療費が一定金額以上だった場合に、確定申告すると払いすぎた税金の一部が返ってくる制度です。
医療費控除の対象の金額は以下の式で計算できます。
【医療費控除の計算】
①実際に支払った医療費の合計金額
②保険金など受け取った金額
③10万円or所得金額の5%のいずれか少ない方
計算式:①-②ー③
これだけ見ても分かりにくいので具体例で見てみましょう。
具体例1:支払った医療費15万円、保険なし、所得金額300万円の人の場合
①15万円ー②0円ー③10万円=5万円(医療費控除の金額)
※10万円<300万×0.05
具体例2:支払った医療費15万円、保険なし、所得金額150万円の人の場合
①15万円ー②0円ー③7.5万円=7.5万円(医療費控除の金額)
※10万円>150万×0.05
ここで、注意したいのが医療費控除は支払った医療費が10万円以上じゃないと意味がないと思っている方が多いですが、所得金額によっては③が10万円より低くなります。
つまり、この例でいえば年間の医療費が7.5万円以上だと医療費控除が受けられるのです。
一般的な会社員の場合、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」が200万円というのが境目になります。
※給与所得控除後の金額は源泉徴収票の赤枠の部分です。
源泉徴収票の給与所得控除後の金額が200万円を超えている場合
③が10万円
源泉徴収票の給与所得控除後の金額が200万円より少ない場合
③が給与所得控除後の金額×0.05(10万円より低い金額)
が適用になります。
人によっては医療費控除後のハードルが下がるので、ご自身の所得からチェックしてみましょう。
確定申告で医療費控除を受ける方法
確定申告時の医療費控除の申請ですが、平成29年分の確定申告から医療費控除の申告方法が変わりました。
今までは医療費の領収書の提出や提示が必要でしたが、代わりに「医療費控除に関する明細書」を提出することに変わりました。
また、医療費通知(医療費のお知らせ)と呼ばれる健康保険組合から年数回送られてくる、一定期間にかかった医療費が一覧で書かれた明細書の利用が可能になりました。
ただし、送られる回数や時期などは組合や協会によって異なります。
医療費控除の申請の変更点をまとめると以下のような感じになります。
変更前 | 平成29年以降 |
---|---|
領収書の提出or提示が必要 | 医療費控除に関する明細書の提出が必須
領収書の提出不要 ※平成31年までは領収書の提出でもOK |
医療費通知(医療費のお知らせ)
利用不可 |
医療費通知(医療費のお知らせ)
利用可能 |
※医療機関からもらった領収書は提出不要になりましたが、税務署から万が一要請があったときのために原則として確定申告期限の翌日から5年間は自宅で保管しなければなりません。
まとめ
今回の記事では社会人なら知っておきたい医療関連の制度4つを紹介しました。
まとめると
- 医療費が高いときに安くなる高額療養制度
- 入院などで働けないときの傷病手当金(国民健康保険は不可)
- 会社員の業務上や通勤中の怪我や病気のための労災保険
- 払いすぎた税金の一部が返ってくる医療費控除
これらの知識は社会人として自然に身についていくものではありますが、中には知らずに高額な保険を契約してしまう人もいます。
ぜひ、最低限今回ご紹介した制度を理解してから生命保険や医療保険を選びましょう。